2018年10月6日土曜日

空き地

子どもの頃、日本社会は
高度経済成長への道をひた走っていた。
街には、あちこちに空き地があり、
ドラえもんやサザエさんに出てくるシーンのように
そこにはいつも、子どもたちが集っていた。
そんな頃を思い出すのは、
熊本中のあちこちにひろがっている空き地が
まだ何もないままに、何かを待ち続けているからだ。
 
教会の隣のブロックの小さな空き地。
その真ん中で、白い花が身を寄せあっている。
かつては庭だった場所なのだろうか。
この家には毎年きれいな紫陽花が咲いた。
耳の遠いおばあさんが
ひとりで暮らしておられたが、
行き先は知らない。
そのとなりの空き地では、
ボートの腹の上で
猫が西日を浴びながら暇をつぶしている。
海辺でもないのにボートがあるのは、
かつてよく、水が出た地域だったからだ。
それでこの辺の家には、軒や庭先にボートがあった。
今は、そうとう雨が降っても、もう水には浸からない。
 
空き地があっても、子どもが遊んでいるわけではない。
猫も花も、何かを待っている。
そんな空き地が、あちこちに広がっている。
 

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